染の小道
大学同期の日経BP記者、H君のFBから案内があり、「染の小道」なるイベントをぐるっと見てきた。
会場となった中井は、大学入学から3年ほど住んでいた思い出の場所で、十数年が経ってどうなっているのかも見たくなった。イベントは染め物に関連する産業とアートとまちおこしが一体になったもので、妙正寺川や商店街の店先を、反物やのれんで飾っていくというもの。
当時の中井はというと、西武新宿線の駅名は中井なのだが、周辺の地名は落合が多く、住んでいた当時も中井というと、友達も ??? な感じなのだが、落合というと皆ピンとくる、そういう陰の薄い街だった。駅前商店街も隣の下落合に比べると鄙びて、こういう小さなお店はそのうちなくなるんだろうな~というが正直な感想だった。
転機となったは、都営大江戸線の開通で、開通数年後に見に行ったとき、「松屋」や「セブンイレブン」ができていて、びっくりしたのを憶えている。この中井という駅前には、当時はコンビニがなく、一段上がった山手通りまで行かないとコンビニがなかったのが、そのコンビニも地下鉄工事で立ち退きにあってなくなっていた。ちなみに、このコンビニのバイトのお姉さんが、十数年後、大学横のコンビニでバイトしていて、再会したときにはびっくりした。
コンビニというは、地域にとっては毒まんじゅうのようなもので、地元の酒屋さんとかが生き残りのために転業するのだが、それが引き金になってさらに商店街の衰退が進むことがよくある。そういう意味で、どうなるのかと観察しにいったのだが、今日の中井では小さな商店や飲食店が増えていて、商店主の世代交代も着実に進んだ感じで、非常に活気ある商店街に進化していた。そういう中からこういうイベントもわき起こってきたのか?
さて、この中井周辺はWebにもあるように、昔から染め物職人の街で、今でも工場がいくつか残っている。数年前、呉服屋さんのお嬢さんから、友禅を落合の職人さんから仕入れているという話を聞いたこともある。そういう街の歴史と地下鉄開通という活力増を、誰か智恵者がくっつけたんだろう。
イベントは妙正寺川に写真のように反物をかけたり。商店にアーティストの染め物ののれんを掛けたりすることがメイン。プログラムとしては、芸大の前野まさる先生が岡山でやられていたり前例があるものだが、昨今の若者の日本伝統文化回帰の流れもあり、非常に盛り上がっていた。
面白いなあと思ったのは、歩いている人に着物を着ている人が実に多い。こういうイベントなので当然とも思えるが、着物を着ている男子も多く、なかなか面白い。女性もお茶会などで見かける絹の着物ではなく、木綿の普段着という装いで、懐かしい感じがする。もう一つびっくりしたのは、立派な一眼レフを構える中高年女性が実に多い。これは何かの魁けなのではないか。
僕は中井が気に入って、最初は上落合二丁目に3年ほどすみ、その後川を渡った中井の、獅子吼会の隣にまた4年ほど住んでいた。獅子吼会の隣を引っ越す時に「建て替えるので、敷金は全額返します」と言われ、もう少し居れば立ち退き料が出たかもと少々悔しい思いした(冗談ですが)経緯があり、当時のアパートは立派なマンションに建て替わっているのですが、最初のアパートは・・・・まだありました。徹夜で麻雀をして飲んだくれた、泥棒に入られたり・・・・色々なことがあったなあ~。
そういう思い出の街が、元気になっていくのは、寂しい反面非常にうれしいものだと実感しました。