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090226 日本版フィードインタリフ(Feed-in Tariff)の欺瞞

フィードインタリフ制度は、日本語では固定価格買い取り制度と言われるが、太陽光発電や風力発電の普及起爆剤になると期待されている制度である。基本的には、電力会社の料金設定よりも高く設定され、一定期間で設備投資が回収され、その後一定期間は収益が期待できる、電力の買い取り価格の固定と期間を保障することで構成されている。
この制度により、デンマークやドイツでは、ソーラーや風力発電が爆発的に普及した。この制度は、新エネ設備の導入コストを、補助金という形であれ通常料金への上乗せであれ、広く薄く負担しようという制度でもある。
ある意味ドイツやデンマークでは、環境意識が高いから新エネが普及したのではなく、この制度があるから普及したと言われている(以前、デンマークでヒアリングしたときは、この制度が政権交代により廃止され、多くの風力発電が停止していると聞かされた)。ある意味、経済的なメリットがない、もしくは少ない(電力会社の電力価格は15円~25円/kWhであるが、太陽電池の導入コスト÷15年の発電量で算出した太陽電池の単価は大凡40円/kWhであり、経済的に電力会社から購入した方が安い。無論、30年、40年と使い続ければ単価は下がる。)日本で導入が進んでいるのが海外からは不思議がられている。
このような事から、フィードインタリフ制度は学会でも期待されている制度なのだが、先日、二階経産大臣から、ある制度に関する導入検討に関する記事が新聞に出た
買い取り単価を50円/kWhにするということで、太陽光の発電単価を上回っており、一瞬期待したが、
「新制度は家庭など電力利用者が太陽光でつくった電力について、自宅などで消費する以外の余剰分を電力会社に買い取ってもらう内容。既に発電装置を設置している利用者と制度開始から3―5年に設置する利用者が対象。買い取り価格は太陽光発電の普及に合わせて、年度ごとに下がる。」(日経新聞)
と続く。電事連の会長が合意するのも分かる。ほとんど意味がないから。ヨーロッパの制度を参考にしながら、巧妙に骨抜きしている。これで導入が進んだらほとんど詐欺である。
問題点は、2点あり、一つは買い取り価格を余剰分に限っていること。二点目は普及と共に買い取り価格が下がることである。
EUでは、家庭に入れた太陽電池でも自家消費しない。全量電力会社に販売する。つまり、自家発電した分を高く買って貰い、自家消費分は安い電力会社から購入して差額で儲けるのである。余剰分に限れば、家の規模や家族構成、ライフスタイルによっても異なるが、ほとんど余剰分が発生しないこともある。その場合、先に述べた単価問題は何の解決にもならない。
また、ドイツやスペインでは価格の固定期間は20年から25年であり、確実に元が取れるということを保障している。だから投資として成立する。数年で見直しが約束されているような制度を誰が信用するだろうか。