ジャカルタでのパッシブ住宅調査

SATREPS DeLCAの一環で、ジャカルタ近郊の住宅地でパッシブデザインを取り入れた住宅を見学。
予算の関係もあり、徹底したとまではいえないが、エアコンをなるべく使いたくない、というそれなりの富裕層がいることの確認にはなった。

ホーチミンのフローティングハウス

ホーチミン在の佐貫大輔氏のご厚意で、川縁に建つ個人住宅を見させていただいた。
立派なフレンチコロニアル風(たぶん。この写真の手前)の母屋の前庭を利用した若夫婦のための家。サイゴン川と幹線道路に挟まれた浸水域に位置するので、道路面からは1.5mほどFLが上げられた、親水害型の住宅。

一階は寝室で見せてもらえなかったが、収納に風呂場、トイレがある。二階はリビングとダイニング。周りをぐるっとテラスが囲み、建具を開放すれば周りの自然と一体化する開放的な空間となる。訪問時は室温30℃、湿度55%程度だったが、少し汗ばみはするが風が流れて、仕事をしたりおしゃべりするには問題ない環境。網戸が一部しかない(夜間に開ける想定の窓)ので、スプレーは必須らしい。

妙に親近感を覚えた佐貫氏。小さいアイコンで自分だと思って開いたら佐貫氏だった。
ベトナムとの縁は、未来開拓事業でハノイに作ったスペースブロック(設計はシーラカンスの小嶋さん)の担当者として常駐したことがきっかけらしい。自分もその前年に始まった同じ未来開拓事業で、富山の職芸学院に完全リサイクル型住宅の担当者として、島崎棟梁宅に居候していた時と重なるので、その背景もまた似ている。

むつざわスマートウェルネスタウン

バイオマスコジェネの災害時の活用と経済性を研究している学生に便乗して、睦沢のむつざわスマートウェルネスタウンを見学に。
2019年の台風での被害で停電が発生した際、コジェネが稼働して周りが停電するなか、ここはコジェネが稼働してシャワーや携帯の充電などを提供したことで一躍有名になった。ここが面白いのは、千葉のこの辺は、日本では珍しく天然ガスが湧いていて、都市ガスも地産できていること。
災害時に発電できたことと、天然ガスが地産であることには直接関係はないが、森林というエネルギーが周辺にあり、それを使ってバイオマスコジェネを動かす、というアイデアとフレームは同じ。

スマート、ウェルネス、今時のマーケティング用語がてんこ盛り。
要はウェルネスとして道の駅に温浴施設を併設、その熱源としてコジェネを導入、その以外にもPVや太陽熱も入れて、併設された町営住宅に自営線を引いて供給。そのための電力会社(PPS)も設立して、その他の町営の施設に供給している。いろいろな補助金を使い倒して上手く組みたてている。プロジェクトとしては、やや設備的にオーバースペックな感じはするが、補助金を取るためのテクニックでもあるし、全体としては矛盾はなく、いいプロジェクトだと感じる。

タイ伝統民家の洪水対策

アユタヤ地域の伝統的な民家。
最近は木造価値の再発見があり、同じような意匠で新築も見られる。

これが建っているところは、川のすぐ横で堤防の内側。日本だと河川敷に当たるとおもうのだが、それなりに集落が点在している。
写真にもあるように、ほぼ全ての世帯が船を有して洪水時に近くの道路までは船で移動。
群棟になっているのは、親世代の棟、子ども世帯の棟、と増築を繰り返すかららしい。

徐々に水位が上がる大河型の洪水なので、激流が押し流す(岸辺のアルバム 的)ことはほぼないらしい。
荒川・江戸川の決壊で想定されるのは、川近くは激流だがそれ以外はゆっくりと上昇して、なかなか水が引かないタイプの洪水で、そのようなエリアではこのような高床型で避難しないというあり方も、検討すべきだろう。
このエリアの住民も、想定水位の高まりにともなって、床を上げる改修を自前で行っている。

※ 水位が高まっているのは、バンコク市街地の堤防嵩上げが進み、その分排水速度が遅くなって上流部の水位が上昇することになったらしい。

大林組 Port Plus

大林組の横浜支店を建て替えて、自社の研修施設にするというプロジェクト。
鉄骨の周りに木を貼る、というようななんちゃって木造でなく、高さ31mを超える、高さ44m・11階建ての純木造耐火高層建築。
木造建築の良いところは軽いところ。100尺の高さ規制のあるエリアなので、元の建物からは13m分以上、3,4層は高くなっているはずだが、基礎は再利用なので工事も静か。だったらしい。今回はセットバックにより余所より高層にして眺望を確保。

この規模の純木造が日本でできるようになったことは正直感慨深い。長谷見先生やその他の関係者の地道な努力の成果だ。
内装的にも、木部とそうでない部分のバランスがほどよく、しつこくない。

木部が一部、外部に表しになっているなど、かなりチャレンジング。自社ビルだからなせる技。
構造としての木部、燃え止まり層(石膏ボード)、燃えしろ層、でさらに木の仕上げということで、このこの仕上げの木部は劣化すれば交換する前提。

構造としてもリユースを目論んでいるが、まあ100年は余裕で使われるだろう。建設会社としては、50年くらいで建て替えて欲しいのだろうが、願望がコンセプトによく表れている。

基本的に、見える木部はすべてなにがしかのコーティングがされている。ちょっとテカテカしているので、よくできたプリントに見えなくもない。
こういう経験の積み重ねが、今後の木造建築の深化には重要だろう。


https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220520_1.htm

Looop Resort NASU 那須

SUEPの設計。人と森とエネルギーの共生がテーマの貸別荘。
もう少し涼しくなったら泊まってみたい。

この屋根一体型のPVの使い方は、欧米ではよく見かけるが日本ではなかなか見ない。
建物の寿命と設備としてのPVの寿命が異なるから、なのだがPVも材料はガラスとシリコンなの、そうそう劣化するものではない。劣化するのは電気の配線やコンディショナーなので、配線の交換にさえ注意して設計していれば、実はそれほど問題ない。

日本では、PVの寿命と廃棄が問題視されているが、基本動き続ける限り廃棄しない、というのがベスト。
木造の駐車場での応用も面白い。

元有明体操競技場

昨年開催されたWOORISE2021の関連イベントとして、元有明体操競技場等の見学会が開催された。
下は無観客となって(それなりに選手や関係者が座っていたが)、目的は果たせなかった椅子の天板と側板。
この建物の改修後、もしくは都内の別施設で転用されるらしい。

建物は展示場として現在コンバージョン中。この規模の展示場にニーズがあるんだろうか。大きさ的にはまさにちょっと大きめの体育館で、そのままにしておけば良かったんじゃないかと単純には思う。

日本的な「反り」を持つ外観は非常に端正で美しい。
逆に建物内の木造梁は端部の曲率がわざと変えられてずんぐりとした印象で野暮ったい。全体的には張弦張りでシャープな作りではあるのだが、照明を取り付けるためのキャットウォークもちょっと邪魔な感じ。

全国から2300㎥のFSC認証材を集めて作られた。
FSCということでどれくらい上乗せしたのか聞きたかったが時間超過で聞けずじまい。

外装は8cmの間伐材の角材。この裏側は機械室なのだが、痩せて外が透けて見える。
外装の制限はないのだそうだが、建物側は不燃処理。軒先側は防腐処理材を使っているとのこと。はやり軒先側は汚れが強く黒ずみが目立ち出している。将来的には三段階の帯のようになるかも知れない。

久しぶりの建物見学はやはり楽しい。



WEEB の試作開始

災害発生時の仮設住宅供給のタイムラグを解消しようと進めている
災害即応型コンテナ型仮設住宅ユニット。
従来提案していたものを改良し、被災地が停電していても機能するZEHタイプへのバージョンアップを目指します。
設計はMEメジャー/建築学科の吉村靖孝先生。吉村研と高口研の合同プロジェクトです。

基本的な考えは、備蓄倉庫を住宅にも使えるように改良し、災害発生時は物資と共に全国から集める、仮設住宅の備蓄提案。
平時から太陽光パネルを載せることで、建設コストを回収し、非常時には被災地が停電していても、一定の機能を維持し、被災者にもできる限りの電力供給をする。

というアイデア。

これからPVを載せて作り込みます。

木造大型パネル施工実験終了

共同研究をしているウッドステーションさんと木造大型パネルの実大施工実験が無事終了しました。
パネル工法はこれまでもありましたが、木造軸組をベースとすることでパネル化という技術による制約をほぼなくしたこと。トラックに乗せられる最大限まで大きくすることで施工期間を短縮したことが特徴で、その背景にはパネルの精度向上があります。
ウッドステーションは受託加工業と看板を掲げており、工務店さんやビルダーの仕様、要求に応じていかようなものでもパネル化して提供しますというスタンス。もちろん単純な、標準化されたほうが早く安価にできるはずですが、コンセプトはそういうことになります。
工務店やビルダーが主要なターゲットですが、直営で建てたい建築家やセルフビルドの施主の選択肢にもなり得ると思うのですが、その辺の関心はあまり高くないようでこれからの課題。

東南アジアのショップハウスの天井

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カンボジアで現地で新たに開発されるショップハウス関係者へのヒヤリング。
研究室では、現地の典型的な住宅であるショップハウス(テラスハウス)の改善案を提案しているが、その一つが天井を張ることと天井裏に断熱材を貼ること、そして小屋裏換気を行うことなのだが、このケースは天井を張ったのみのケース。エアコン周りの平面温度を見ると32℃程度なので天井付近の空気温度は同程度かそれより少し低いだと思われるが、天井表面温度は36℃超。外気温はも30℃前後なのでやはり高い。
まずは小屋裏換気をしっかりすること。次に天井裏に断熱材(放射対応あり)を敷設すれば良いのだが、断熱材のほうは調達の問題もありなかなか難しい様子。経済成長中の国では金利も高いので時間が勝負。材料調達でもたついて工期が遅れると事業としては命取り。現地で生産でき在庫が確保できる材料か、サプライチェーンをしっかりするしかないが、現時点ではそのいずれもない。このあたりが日本の役割かもしれない。

タイ タマサート大学の学食

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こえ
タイ タマサート大学の学食。
エンジニアリング系の先生と建築学部の先生と打ち合わせ。情報交換とBLEDAの提案を受ける。
写真の学食は、日本の経団連とタイの経済団体が寄附した建物の横にある学食。屋外で折板の金属屋根で葺かれている。気温は30℃を超えているのだが、それよりも屋根からの輻射がきつい。これで風がなければかなり過酷な環境。シーリングファンがなければ、ゆっくりと食事なんかしてられません。
建築としてどのような材料を選ぶかは室内環境に大きく影響します。これが東南アジア伝統のニッパヤシ葺きであれば、ずっと快適なはずです。しかしこれはこれで葺き替えが面倒ですし、今となってはなかなか効果。これをどうするかは建築のデザインと技術の役割だと思います。

環境建築事例訪問~日本橋アステラス三井ビルディング~

【訪問事例概要】

訪問日:2014/9/10

訪問先:日本橋アステラス三井ビルディング

設計者:山下設計

所在地:東京都中央区日本橋

 

高口研究室では、環境建築に関する研究の一環として、近年竣工した先進的な建物の見学も行っています。

今回はその2014年度の1回目、日本橋アステラス三井ビルディングに行ってきました。

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地上17階、地下2階の建物で、4階から17階が賃貸オフィスとなっていますが、全フロアをアステラス製薬が本社として使っています。

専有部の照明のLED化や、湿度コントロールにより体感温度を低下させる「クールビズ対応空調機」の採用など環境への配慮に力を入れており、

賃貸のオフィスビルとしては初となる「LEED-CS(テナントビル版)」のゴールド認証の取得を予定しているのだとか。

今回、オフィス内部の見学は叶いませんでしたが、緑化率が高く、外観からも環境への配慮がうかがえました。

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最後の写真は、薬草だけを植えた緑地の「薬ガーデン」。製薬会社らしさを出した面白い緑地。

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