20110527 蓄電池付き住宅は有りか?
日経系の記事で、蓄電池付き住宅が夏の電力不足を受けにわかに注目されている旨の記事を掲載されている。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20110526/271407/
停電を避けるために、蓄電池は悪いアイデアではないが、いくつか誤解もあるようで、僕の意見をここにまとめておきたい。
■蓄電池は省エネか?
上記の記事の中でも「省電力につながる蓄電池」とさらっと書いているが、蓄電池で電力消費は減らない。バッテリーに触れば暖かいように、バッテリーでは一定量の電気が熱に代わり失われる。充電と放電の際の化学変化や機構によるものだが、充電するだけで10%程度が失われる。時間が経つとさらに減るので、充電池を通すだけで10~15%程ロスになる。折角省エネ型のライフスタイルや高効率の機器を使用しても、充電池を通すだけでその効果が吹き飛んでしまう。
■太陽光発電を充電
充電池だけでは受けが悪いと見たのか、大概太陽光発電との組み合わせで宣伝している。これもおかしな話で、電力需要が大きい昼間に太陽で発電した電気を、ロスを覚悟で充電する必要など全くなく、導入した住宅という小さなスケールで見て電力が余ったとしても、東京電力に売電して火力発電を減らすのに貢献したほうが良い。
電気を自給自足したい! という自己満足もまあ考えとしてはあるが、昼間高く買ってくれる電力を売らずに貯めておいて、安い夜間電力(契約によるが)を買わないというのも、経済的にみておかしい。
もちろん、安い夜間電力という前提がおかしいという話もある。現在、原発の多くが停止しており、夜間の原発による余剰電力を安く売るという前提が崩れている。しかし、中長期的に見れば原発は廃止の方向に進むかも知れないが、短期的に見れば原発の再稼働は避けられないだろう。仮に原発の停止が長期に及べば夜間電力の値上げは不可避で、そうなればオール電化住宅の住民を中心に電気代が跳ね上がり大騒ぎになる。
(そもそも原発が安いとのは本当なのか? という疑問もある。この辺は正直よく知らないので現在調査中)
■蓄電池により停電が回避
確かに蓄電池により停電が回避できる安心感はある。太陽や風力が増えれば、系統が不安定化するとの話もあるが、日本で頻繁に停電が起きるようになるとは考えられない。社会的にそのようなことは許容されないだろうし、日本の技術力で解決できない問題だとは思えない。
つまり、何十年に一度の大規模停電のために日々電気をロスし、何百万円(充電池には寿命があり、何年かおきに買い換えがいる)も投資するか? というリスク管理のコスト問題ということになる。
僕は、結果的には電気自動車がこの類のリスクを担うようになる思っている。過渡的商品である家庭用充電池の将来性は小さい。
■なによりも電気が無くても生活できることが一番ではないか
阪神淡路大震災でも6日で電気は復旧、今回も仙台の中心部では翌日に電気は復旧している。昔、東京電力の関係者に直下地震が起きたときにどれくらいで復旧するかヒアリングしたときに「東京は神戸とは違う。○○分(5分だったか10分だったか・・・・)で復旧します。」と豪語していたのを思い出すが、今回の事故で東電のいうことは相当信用できないのだが、それでも神戸よりしっかりした対策をしてきたのは事実であろうし、遅くとも数日で復旧するように思う。この数日が致命的な病院や業務では、それなりの対策が必要であろうが、これくらいの期間であれば、電気がなくてもなんとかなるよう、用意・準備しておくことの方が、自然で靱性も強い根本的な対策であるように思う。
今回自宅が輪番停電で電気が止まったとき、冷蔵庫の音がしないとこれほど静かかなのかと少々感動した。断熱がちゃんとしていれば、そうそう寒くなることもない。夕方に停電したときはいなかったが、聞けばロウソクもおつなものだったと聞く。停電が大変かどうかは、そのひとの心持ち次第なのだ。
一方で、
電気が止まるとガス給湯器も動かない。
電動のトイレが流せない。(マニュアルを見ると流せることが分かるのだがわかりにくい)
太陽電池がついていても、家のコンセントはやはり停電する。(分電盤にコンセントがついているものもあるらしい)
といった、ちょっとした工夫で停電時の生活水準が向上しそうなことが随分となる。そういう事はすぐにでも改善すべきだろう。