20110715 今夏の節電対策に関する誤解と背景
本当にこんな節電する必要があるのか? 友人から確認を求められます。そして小生も疑問に思っています。
この原因として考えられるのは、いわゆる供給電力なる情報の信頼性が失われていること。今夏の節電15%があくまでもピークに対するものであることへの無理解。そして無理解を放置した方が、電力会社にとっては得になるという背景があるように思います。
一つ目の情報に関して言えば、供給電力は8月に向けてどんどん増強されているのですが、その情報がほとんどフォーカスされない。また、たまに減ったりするので、恣意的な情報なのではないかと疑いが生じている。また揚水の扱いも各種雑誌等で指摘されていますが、明確な説明がされていない。そういう疑心暗鬼の中で、対策推進が行われています。正確な情報の公開こそ、信頼関係醸造の基礎なのですが、それが揺らいでいるわけです。九電のメール事件もそれに追い打ちをかけたように思います。今からでも遅くないので、最終的な供給力の内容を一覧にして、いつ工事が終わって供用を開始できるのか、今日の供給力はそのうちどれによって賄われているのかなど、どれはお休みしているのか、等々詳細な情報をつまびらかにして欲しいと思います。
2番目は少々ややこしい。今夏の問題は、とにかく停電を避けることが重要で、ピークを下げることが第一の目的となります。そこでピークは何時か? ということが問題になります。多くの人は、午後2時~4時ごろがピークと思っていて、確かにそうなのですが、一般的なオフィスでは9時~20時頃まではほぼフラットであまり差がないというのが実情なのです。そこで9時~20まで節電せよということになるのですが、それはそれでそれぞれの実情に合わせて対策を考えればもっと楽にできる、と専門的にはなるわけです。例えば、昼休みにオフィスを真っ暗にしてお弁当を食べているという、何ともさもしいニュースを見かけますが、よく考えれば全く意味がないことがわかります。昼休みはOA機器の使用率が低下するので、そもそも上記時間帯の中では最も電力使用量が小さい時間帯です。つまりこの時間帯がピークになることはほぼないので、この時間帯にあえて照明を消したり、エアコンを消したりする意味は全くありません。むしろ、午後1時になって改めてエアコンを入れると、急激にエアコンが動くので、逆にピークを押し上げることになってしまいます。大学でも、昼休みに節電をしなさいとアナウンスが流れるのですが、対策としてはむしろ教室を昼休みに予冷しておいて、午後一番のピーク(実測結果でも13時~14時にピークが出ている)を下げるようにするのが、ピークカットという意味での本当の対策なのです。同様に、夜の対策も意味がありません。以前、入浴後にドライヤーを使わないというコメントを、テレビで専門家が褒めていましたが、意味なしとちゃんと説明すべきです。
さて、三つ目。これは東電側の事情です。原発が止まっているので、東電は代わりに古い火力発電や小型のガス発電を新設して供給力を増やしています。このための燃料費負担増は年間1兆円とも言われます。東電としては、この燃料の負担増を何とか押さえたい。当然です。節電次第ではおそらく数百億円規模の削減になるので、東電としてはピークだけでなく、総量もできれば減って欲しいと思うはずです。これは地球温暖化対策としても意味があるので、政府としてもあえて否定する必要はないと考えているのかもしれません。また、電力料金には夜間料金というのがあり、夜は安く設定されています。これは夜間に余り気味の原発由来の電気をなるべく使って、昼間のピークを下げるための誘導策なのですが、原発が止まり、夜間も火力の割合が増えると、夜間電力料金に縛られて、火力で発電した高い電力を、安く売るという逆ざや状態が発生します。夜間電力を活用しているオール電化住宅は、全体で9%前後(新築に限れば30%強)と推計されて、決して少なくないので、東電としてはこれも当然抑えたい。つまり夜間も節電して欲しいと思うわけです。
現在の状況は、こういう複雑な関係性の中で、闇雲に節電が行われ、無用の無担を国民に与えているような気がしてなりません。
またつい先ほど、エアコンの設定温度を28℃以上にしましょうと学内放送がありました。日本には通称「建築物衛生法(元通称:ビル管法)」という法律があり、大きな建物に対しては(詳しくは検索してください)、室温を17~28℃にせよという管理基準が定められています。上記のアナウンスはこの管理基準をかる~く無視しています。いつから建築物衛生法の管理基準を無視してよいとなったのでしょうか、知っている人がいれば教えて欲しいと思います。これもまた、法令遵守されない例だと思います。