平取町のバイオマス熱電併給施設

修士論文の現地調査に立ち会い。
北海道の平取町。VOLTERのCHPを入れて、隣接する公民館と国保病院に電気と熱を供給している。熱については、生チップの乾燥に2/3が使われており、病院に廻っているのは1/3程度。病院では外調機の加熱(病院なので加湿もしているかも)と給湯に使っている。発電量は40kW。

VOLTERはフィンランドの企業だが、日本で代理店ができたことと、木チップを燃料としてとっつきやすいからか、最近人気が出て導入数が増えている印象。通常は40kWのタイプを複数台入れてバックアップを取りながら運転するが、平取町のは一台。代わりに50kWh程度の蓄電池が入っている。停電時は蓄電池を使って起動する。公民館や病院の防災対策も兼ねる。

バイオマス施設と病院、公民館の電力供給をいくつかのモードで運転しているのだが、内容が複雑で担当者も大変そう。町の職員と病院の用務員(50%)が運転を担当しているトのことで、運転要員の継続性が課題か。

いずれにしても、エネルギー事業としては厳しいようで、防災・レジリエンス対策、カーボンオフセット価値、地域経済への波及などを考慮した総合的な価値付けが大事だろう。

調査は竹中工務店の山崎氏(木村研究室OB)との共同研究。今回も山﨑氏と同道。氏の紹介で室蘭工大の桒原先生に車を出して頂いて大変お世話になる。

遊木の空家改修

空家改修は、いろいろな大人の事情で猛烈なスピードで進んで行くので、基本設計を提案して後は施主さんと大工さんで細かい所を調整している。ということであっという間にこんな感じに。簡易宿泊所になる予定だが、できた後のプログラムづくりがこれからのメイン。

1月には竣工予定。

熊野サミット2022

熊野市の野地木材さんに呼ばれて熊野に通い始めて10年。
途中で多くの大学が同様に研究や調査、支援活動に入っていることがわかって、横連携しようと始めたのが熊野サミット。伊勢でサミットがあったので、ノリでつけてしまった名前だがこんなに続くとは。

早稲田、三重大、近大、相模女子大が活動内容をそれぞれ報告。今年は特別講演として、鹿児島大学の鷹野敦先生もお招きして話を聞き、その後は「くまのこどもだいがっこう」づくりにむけたプログラムづくりワークショップ。

研究室からは修士1年生の堀崎君が発表。
二日前にできあがったポスターを見せてもらったのですが、ややインパクト不足でやり直し。

子ども教育支援建築会議全体会議・シンポジウム

11月19日は、年に一度の建築学会、子ども教育支援建築会議の全体会議とシンポジウム。
会員相互の情報交換と記念のシンポ。
活動報告としては卒論生の大竹君が卒論で扱ったプログラムを紹介。

その他にもオンライン対応のもの、マインクラフトを使用してワークショップをするもの(会場はeGameのスタジアム)など、ならではの取り組みが多い。
発表の数は、コロナ禍ということで、やや少ないが内容はコロナ対応もこなれてきて充実した印象。

基調講演は本学でも非常勤講師をしている山﨑健太郎先生。
居場所 がテーマなのだが、最後は「建築とは何か?」という問い。

議論は懇親会でも続き、充実したシンポとアフターシンポとなりました。
山﨑先生、一年生の非常勤も有り難いのですが、3年生以上と飲みにいってやってくださいよ!
セッティングしようかな~。

総合防災訓練に参加

仙台市泉区の総合防災訓練に参加。
訓練に参加するだけなら、東京のでいいわけだが、今回はエコスクールやZEB対応となった小学校で、太陽光発電などの使い方のヒヤリングも兼ねていたので、このような仕儀になった。

ところが担当の学生が体調不良で不参加となり、インタビューは延期に。防災訓練は年に一回しかないので参加決行となった次第。

折角なので、防災訓練の見学中に、防災訓練のやり方やかかった時間などを計測。避難所でのパーティションの設営にかかる時間、自家発電装置の説明や初めての使用までにかかる時間など。

参加者はいろいろな所を廻って体験や訓練をするのだが、調査担当の学生は一つの訓練を二度、三度と観察して疑問点を見つけては担当者に確認してと、それなりに密な調査に。

面白かったのが、最近普及しているHONDAの小型発電機(カセットコンロのボンベ2本で、900Wが2,3時間いける)の訓練。
ボンベの首の所には、1cmほどの切欠きがあって、それを下向きにしないとロックがうまくいかない。ところがこの切欠きが下になるようにとの指示で、参加者はこれがなかなかうまくできない。蓋のうらには向きなどの指示が書かれているのだが、字が小さくて読まれない。

そのうち参加者から、なぜボンベを上向きにセットするように設計しないのか? と、至極真っ当な疑問と怒り。確かにそうだと思う。

むつざわスマートウェルネスタウン

バイオマスコジェネの災害時の活用と経済性を研究している学生に便乗して、睦沢のむつざわスマートウェルネスタウンを見学に。
2019年の台風での被害で停電が発生した際、コジェネが稼働して周りが停電するなか、ここはコジェネが稼働してシャワーや携帯の充電などを提供したことで一躍有名になった。ここが面白いのは、千葉のこの辺は、日本では珍しく天然ガスが湧いていて、都市ガスも地産できていること。
災害時に発電できたことと、天然ガスが地産であることには直接関係はないが、森林というエネルギーが周辺にあり、それを使ってバイオマスコジェネを動かす、というアイデアとフレームは同じ。

スマート、ウェルネス、今時のマーケティング用語がてんこ盛り。
要はウェルネスとして道の駅に温浴施設を併設、その熱源としてコジェネを導入、その以外にもPVや太陽熱も入れて、併設された町営住宅に自営線を引いて供給。そのための電力会社(PPS)も設立して、その他の町営の施設に供給している。いろいろな補助金を使い倒して上手く組みたてている。プロジェクトとしては、やや設備的にオーバースペックな感じはするが、補助金を取るためのテクニックでもあるし、全体としては矛盾はなく、いいプロジェクトだと感じる。

共同研究先の屋上芋緑化収穫

室外機の間に棚を作って芋を水耕栽培。
日かげになる効果も一定あるが、効果としては排気のショートサーキット抑止の方が大きい。
芋の炭素固定量や水耕栽培に関わるエネルギーなんかも計算しています。
この日は、ビルオーナー関係者らがわちゃわちゃと収穫。

この辺のイベント開催を、ビル管理会社の付加価値として付加していきたいのだが。

SDGsスーパーシティゲームMini & ウッドビルダースゲーム

研究室では環境教育教材の開発を修士1年生の演習として行っていますが、今年は新版ウッドビルダーズと昨年作ったSDGsスーパーシティゲーム廉価版を出品。
昨年よりも人多く、外国人もかなり大勢参加していました。こういう会だったのね。

ウッドビルダーズは、国産材と外国産材の利用が、国内の森林の活性化やCO2固定と結びついているかを、工務店の収入(利益追求)との天秤に掛けながら、両立を競うゲームで、小学校高学年から中学生辺りが対象。SDGsスーパーシティゲームは、お題となった都市をテーマに、都市開発の多面的側面からSDGsを学ぶというゲームです。

お問合せなどはこちら。共同開発者です。
https://insplace.co.jp/service/sdgs_supercitygame/

攻めるね~。



熊野遊木 五百生の家 プロジェクト

9月末、熊野遊木再訪。
熊野市の数ある入江の一つにある小さな漁村、遊木にある漁家。
ひときわ目立つRC造で、さぞ昔は儲かったんだろう。
この辺りはサンマ漁が盛んで、かなり遠くまで出かける船もあるようだが、最近は不漁で景気は良くないらしい。
この漁家も先々代までは漁師だったが、先代は漁師にならず、この家主は市街地で食堂を経営している。

現在の家主は、手広く商売をしているM氏。熊野には何度も行っているが、知らないうちにお世話になっていた御仁。
元の家主からこの家を入手した経緯は、それほど積極的なものではないが、商売人としての算段はあったのだろう。

ということで、前日に研究室で作った提案をプレゼン。OKということで翌日は早速解体工事。
研究室5人と僕の6人、ぷらすM氏の舎弟の高校生2人。研究室5人は男子2人に女子3人。男子は2人ともエバンゲリオンの体格(細身という意味)で、やや非力な構成。
M氏ももっと男を連れてこんかいとややご不満なのだが、いやいや、今時女子は男より強力なのです。男子も頑張りました。

朝9時から16時まで作業し、後半は疲れ知らずのラグビー部高校生の独壇場で、みるみる解体が進み、トラック二杯分の建廃を排出。
計算外は、用意してくれたチェーンソーが、壁下の金属のラスを切ってしまって、早々に戦力外。そこかしこに打ち込まれた5寸釘に大苦戦。釘をカットできるマルチソーを用意しておくべきだった・・・・。痛恨。道具大事。

プロジェクトは空家の再生、活用なのだが、地域の再生と地元の木の活用、商品開発含み。
乞うご期待。

タイ伝統民家の洪水対策

アユタヤ地域の伝統的な民家。
最近は木造価値の再発見があり、同じような意匠で新築も見られる。

これが建っているところは、川のすぐ横で堤防の内側。日本だと河川敷に当たるとおもうのだが、それなりに集落が点在している。
写真にもあるように、ほぼ全ての世帯が船を有して洪水時に近くの道路までは船で移動。
群棟になっているのは、親世代の棟、子ども世帯の棟、と増築を繰り返すかららしい。

徐々に水位が上がる大河型の洪水なので、激流が押し流す(岸辺のアルバム 的)ことはほぼないらしい。
荒川・江戸川の決壊で想定されるのは、川近くは激流だがそれ以外はゆっくりと上昇して、なかなか水が引かないタイプの洪水で、そのようなエリアではこのような高床型で避難しないというあり方も、検討すべきだろう。
このエリアの住民も、想定水位の高まりにともなって、床を上げる改修を自前で行っている。

※ 水位が高まっているのは、バンコク市街地の堤防嵩上げが進み、その分排水速度が遅くなって上流部の水位が上昇することになったらしい。

タイ 災害防止軽減局 ヒヤリング

タイ内務省のDepartment of Disaster Prevention and Mitigation(Wikiの訳では害防止軽減局)にタイの洪水対策についてヒヤリング。
当初、防災減災の教科書のような説明があって、「何しに来たん?」的なやり取りがあり、
そんなことは分かってんねんけど、土木的な対策と建築的な役割分担、みたいなのが洪水先進国としてのタイにはないんか?

と聞くと、ようやく分かった風で議論が始まる。
答えは「ない」。が自治体レベルではリスクのレベルに応じた規制がかかることもあるが、建ぺい率や被覆の浸透性に関する規制がある程度。

向こうからは、担当部局の役人や研究所の研究員も参加してくれたのだが、研究員っぽい方が非常に関心を持ってくれた。
完全に土木的に解決するとなると、ここからは撤退せよ、という地域が出てくるが、建築的な対策をすれば住み続けられるよ! 的なホリスティックな対応は、当然ながら共感する人もいるのだが、行政としてはどうしても縦割り感が否めない。